ステント血栓症発症後の長期予後に関する検討
1.研究概要
現在、冠動脈狭窄に対する経皮的冠動脈形成術(percutaneous coronary intervention: PCI)に薬剤溶出性ステント(drug-eluting stent: DES)が頻用されています。DESにより再狭窄率は劇的に減少しましたが、ステント血栓症、特にステント留置1か月後以降に突然発生した血栓により急性心筋梗塞や突然死を来たす遅発性ステント血栓症(late stent thrombosis: LST)と超遅発性ステント血栓症(very late stent thrombosis: VLST)が新たな問題となっています。過去の報告では、第1世代DESにおけるVLST、LSTの1年死亡率は、通常の心筋梗塞患者さんよりも高いことが明らかになっています。
DES自体の進歩によりステント血栓症の頻度は低下していますが、依然としてステント血栓症は日常臨床の課題です。このように、ステント血栓症発症後の予後について、多施設かつ長期の検討は十分ではありません。
2.対象症例
下記の研究実施機関において、2008年1月から2017年12月までに、ステント血栓症を発症し、緊急カテーテル検査を実施した患者さん。
ステント血栓症は、ステント留置後に急性冠症候群の所見(急性の虚血症状、虚血性心電図変化、心筋逸脱酵素の上昇のいずれか)があり、血管造影で血栓又は閉塞が確認された症例としています。
3.研究実施機関名
大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学講座
関西ろうさい病院 循環器内科
国立病院機構大阪医療センター 循環器内科
大阪警察病院循環器内科
大阪急性期・総合医療センター 心臓内科
大阪労災病院 循環器内科
西宮市立中央病院 循環器内科
市立豊中病院 循環器内科
市立東大阪医療センター 循環器内科
箕面市立病院 循環器内科
八尾市立病院 循環器内科
桜橋渡辺病院 循環器内科
(研究責任者:坂田泰史 大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学講座教授)
4.研究目的
冠動脈狭窄または閉塞病変に対してステント留置を行った後に、ステント血栓症を発症した患者さんの長期予後を後ろ向きに検討することです。
5. 研究方法
各施設において、『2. 対象症例』で記載した患者さんの診療情報を電子カルテから抽出し、予後調査を行います。さらに治療内容やステント留置時または、ステント血栓症発症時の画像情報より、ステント血栓症のメカニズムについて検討を行います。
6. 意義
本研究により、不明な点の多いステント血栓症発症後の長期予後を検討することができます。またステント別や発生機序別の長期予後を明らかにすることができ、今後の冠動脈疾患の診療に役立つことが期待されます。
7. 個人情報の扱い
患者さんの診療情報に含まれる、お名前、生年月日、カルテ番号、住所、電話番号等、ご本人を特定しうる個人情報については、匿名化を行い、情報が外部に漏れないように各施設において厳重に管理、保管します。また、研究成果が公表される場合にも、患者さんが特定されないように取り扱います。
8. 本研究に関する代表連絡先
大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学講座
多施設共同研究グループ 中谷大作
TEL 06-6879-3298
9. 研究対象者に研究への参加を拒否する権利を与える方法
研究の対象患者さんまたは、代理人の方は、上記問い合わせ先に連絡することによっていつでも本研究への参加を拒否することが可能です。