虚血部門
取り扱い疾患
冠動脈疾患全般
安定狭心症、無症候性心筋虚血、不安定狭心症、急性心筋梗塞、陳旧性心筋梗塞など
特色
1. FFRCTを駆使した治療方針の決定
大阪大学では、FFRCTを2020年12月より導入しました。FFRCTとは、心臓CT検査の画像データを元に数値流体力学の技術を用いて冠動脈狭窄病変の血流低下の程度を測定する非侵襲的検査です。現在、FFRCT解析の導入には厳格な施設基準が設けられており、全国でも施行可能な施設は限られています。
心臓カテーテルによる経皮的冠動脈形成術(Percutaneous coronary intervention, PCI)の適応を判断するためには、見た目の狭窄度だけではなく機能的虚血の診断が必須です。従来はこの機能的虚血の診断のために、負荷心筋血流シンチグラフィー検査を追加、あるいは入院の上、心臓カテーテル検査による冠血流予備量比(Functional Flow Reserve, FFR)の計測が必要でした。しかし、このFFRCT解析を用いる事で、心臓CT検査の画像データから仮想のFFR値を計測することが外来で可能となります。そのため、PCI治療が必要な病変を早期に的確に判断することが可能となり、また不必要な入院によるカテーテル検査を最小限に抑えることが期待されます。
2. 周術期リスクの高い症例や複雑病変を有する症例への取り組み
カンファレンスを行い、複数名の医師で「PCI」か「バイパス術」どちらを選択すべきかの検討を行っています。当科の特徴として、近隣の連携病院ならびに大阪大学関連病院からの周術期リスクの高い症例(虚血性心筋症や担癌など)や複雑病変を有する症例(高度石灰化病変や慢性完全閉塞病変など)の紹介が多く、症例数に比して難易度の高いPCIを多く行っています。また、救命救急センターとの連携により、心肺停止や心原性ショックに陥った重症患者様にも高度な集中治療を行い、救命のために全力を尽くしております。
3. 心臓移植を見据えた集学的治療
虚血性心疾患で重症心不全を患った患者さんに対しては、心臓血管外科と連携し、補助人工心臓の導入などを行うことも可能です。さらに、大阪大学医学部附属病院は日本で11施設しかない心臓移植実施施設の1つであり(2021年5月現在)、心臓移植※を見据えた治療まで行うことが可能です。
(※ 心臓移植の適応基準を満たす場合に限ります。)
虚血性心疾患が疑われる患者様のご紹介を検討中の先生方へ
高血圧症・糖尿病・脂質異常症・喫煙など、狭心症や心筋梗塞の危険性が高い患者さんの冠動脈精査のため、近隣の医療施設から心臓CT検査目的で患者様を当科にご紹介頂くことが可能です。撮像は原則受診日当日※に行うことで、患者様の通院のご負担を軽減するよう努めております。虚血性心疾患が疑われる患者様のご紹介をご検討頂いている諸先生は下記のリンクをご覧ください。
(※ 問診などで気管支喘息や造影剤アレルギーの既往、腎機能障害があるなど、造影剤使用がハイリスクな患者様は、診察時に代用検査をお勧めするなどの対応を外来診察のうえ行っております。)
診療実績
当科における心臓カテーテル治療成績の年次推移
2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |
PCI(冠動脈カテーテル治療)総数 | 213例 | 258例 | 211例 | 176例 | 145例 | 86例 | 147例 |
待機的PCI(安定狭心症など)数 | 184例 | 203例 | 172例 | 159例 | 123例 | 65例 | 95例 |
緊急PCI(急性心筋梗塞など)数 | 29例 | 55例 | 39例 | 17例 | 22例 | 19例 | 52例 |
昨年(2023年)の診療実績
PCI(冠動脈カテーテル治療)総数 | 147件 |
待機的PCI | 95件 |
緊急PCI | 52件 |
急性心筋梗塞 | 36件 |
ローターブレーター | 10件 |
慢性完全閉塞性病変 | 6件 |
心臓CT | 1115件 |
スタッフ
虚血部門主任
中村 大輔(なかむら だいすけ)
【略歴】
平成18年3月 大阪大学医学部卒業
平成18年4月 − 平成20年3月 大阪労災病院 初期研修医
平成20年4月 − 平成23年3月 大阪労災病院循環器内科 後期研修医
平成23年4月 − 平成26年3月 大阪労災病院循環器内科 医員
平成26年4月 − 平成28年6月 Cardiovascular Imaging Core Laboratory, Harrington Heart and Vascular Institute, University Hospitals Case Medical Center, Research associate
平成28年7月 − 平成31年6月 大阪労災病院循環器内科 医長
平成31年7月 − 大阪大学大学院医学系研究科 循環器内科学 特任助教
【専門医・認定医】
日本内科学会 認定内科医
日本内科学会 総合内科専門医
日本循環器学会 循環器専門医
日本心血管インターベンション学会 心血管カテーテル治療専門医
TAVI指導医 (Sapien、Evolutシリーズ)
【主任からのメッセージ】
虚血性心不全や石灰化病変、慢性完全閉塞のような複雑病変を含めて最適なカテーテル治療を提供できるよう努めます。
溝手 勇(みぞて いさむ)
【略歴】
平成12年 大阪大学医学部卒
奥野 翔太(おくの しょうた)
【略歴】
平成24年3月 大阪大学医学部卒業
平成24年4月 – 平成26年3月 関西ろうさい病院 初期研修医
平成26年4月 – 平成29年3月 関西ろうさい病院 循環器内科 後期研修医
平成29年4月 – 令和2年3月 関西ろうさい病院 循環器内科 医員
令和2年4月 – 令和6年3月 大阪大学大学院医学系研究科 循環器内科学 博士課程
令和6年4月 – 大阪大学大学院医学系研究科 循環器内科学 特任助教
【専門医・認定医】
日本内科学会 認定内科医
日本内科学会 総合内科専門医
日本循環器学会 循環器専門医
日本心血管インターベンション学会 心血管カテーテル治療認定医
小杉 隼平(こすぎ しゅんぺい)
【略歴】
平成24年3月 和歌山県立医科大学医学部 卒業
平成24年4月 – 平成25年3月 大阪厚生年金病院(現・JCHO大阪病院)初期研修医
平成25年4月 – 平成26年3月 大阪市立大学医学部附属病院(現・大阪公立大学医学部附属病院)初期研修医
平成26年4月 – 平成30年3月 JCHO大阪病院 循環器内科 医員
平成30年4月 – 令和5年3月 国立病院機構大阪医療センター 循環器内科医員
令和5年4月 – 大阪大学大学院医学系研究科 循環器内科学 医員
【専門医】
日本内科学会 認定内科医
日本循環器学会 循環器専門医
日本心血管インターベンション治療学会 心血管カテーテル治療専門医
松廣 裕(まつひろ ゆたか)
【略歴】
平成25年3月 大阪大学医学部卒
平成25年4月 – 平成27年3月 大阪労災病院初期研修医
平成27年4月 – 平成30年3月 大阪労災病院循環器内科後期研修医
平成30年4月 – 令和4年6月 大阪労災病院循環器内科医員
令和4年7月 – 大阪大学大学院医学系研究科 循環器内科学 医員
【専門医・認定医】
日本内科学会 認定内科医
日本循環器学会 循環器専門医
日本心血管インターベンション学会 心血管カテーテル治療認定医
菅江 宏樹(すがえ ひろき)
【略歴】
平成28年3月 大阪大学医学部卒業
平成28年4月 – 平成30年3月 大阪労災病院初期研修医
平成30年4月 – 令和1年3月 大阪労災病院循環器内科後期研修医
令和1年4月 – 令和2年3月 関西労災病院循環器内科後期研修医
令和2年4月 – 令和3年3月 大阪労災病院循環器内科後期研修医
令和3年4月 – 令和5年6月 大阪労災病院循環器内科医員
令和5年7月 – 令和5年6月 大阪大学大学院医学系研究科 循環器内科学医
【専門医・認定医】
日本内科学会 内科専門医
日本心血管インターベンション学会 心血管カテーテル治療認定医
TAVI実施医 (Sapienシリーズ)