分子心臓病研究グループ

分子心臓病研究グループ ポンチ絵2

グループ概要

 私たちは心不全を含めた心臓病態における、さまざまな生命現象に分子レベルからアプローチすることでその根幹に迫り、ひいては創薬に結びつく分子標的を同定することを目標としています。私たちは心不全に関わる機構としてアポトーシスやネクローシスなどの細胞死に着目した研究を行う過程で、オートファジーと呼ばれる酵母からほ乳類まで広く保持されている細胞内分解経路に特に注目した研究を展開しています。オートファジーは日本が研究の最先端を走っており、近年ノーベル賞候補に挙げられていることで広く知られるようになってきました。
 私たちはこれまで、オートファジーが心筋細胞の恒常性維持や血行動態ストレスへの適応、加齢性変化、減負荷後の心肥大退縮において心臓保護的機能を果たすことを明らかにしてきました。(Nature Medicine 2007, Autophagy 2010, BBRC 2013)その際にオートファジーによって傷害ミトコンドリアが分解されることが病態形成に重要であると考えられています。
 オートファジー過程において、ミトコンドリア独自のDNAが分解不全により遺残することで、心筋炎および心不全を来たすことを明らかにしました。(Nature 2012)ミトコンドリアは外来共生物と考えられており、そのDNAは細菌やウイルスのDNAと同様に自然免疫系を介して炎症を惹起すると報告されています。心臓はミトコンドリアが非常に豊富な臓器であり、ミトコンドリアの恒常性維持がオートファジーの心保護機能の本態であると考えています。
 また、ミトコンドリアは従来のイメージとは異なり、融合と分裂によってその形を大きく変化させる動的なオルガネラです。その形態変化は傷害を受けたミトコンドリアのオートファジー性分解と強い関わりを持ちます。私たちはBCL2L13と呼ばれる分子が、ミトコンドリアの形態変化を誘導し、さらにミトコンドリア特異的なオートファジーの受容体として機能することを報告しました。(Nature Communications 2015)

研究目的および内容

研究目的

心不全などの心臓病態発症進展に関わる分子機構を明らかにすることを研究の目的としています。研究テーマについてはこれまでの研究成果との連続性を考慮しながら、新しいテーマにも取り組んでいます。

研究内容

  1. ミトコンドリアの融合と分裂が心臓病態に及ぼす影響の検討
  2. ミトコンドリア特異的オートファジー関連分子として新規同定したBCL2L13の機能解析
  3. ミトコンドリアDNA分解不全からToll様受容体、炎症反応を介した心不全発症に関わる機構を標的とした新規心不全治療の開発
  4. 心筋細胞における非感染性炎症分子機構の解明
  5. 非アポトーシス性細胞死に関わる分子の心臓病態に於ける機能解析
  6. オートファジーを介した心保護機能の解析
  7. ミトコンドリア分解に関わる新規分子の同定および機能解析

メンバー紹介

【メンバー】
山口 修(准教授)
種池里佳(大学院生)
上田宏達(大学院生)
赤澤康裕(大学院生)
小林春子(大学院生)
杉原隆太(大学院生)
依藤弘紀(大学院生)
木浦有理(技術補佐員)
村川智一
(ポスドク、留学中)

【連携研究者】
大津欣也
(英国King’s College London・教授)
中山博之
(薬学研究科・准教授)
彦惣俊吾
(重症心不全内科治療学
 寄附講座・准教授)
武田理宏
(医療情報学・准教授)

主要論文

  1. Bcl-2-like protein 13 is a mammalian Atg32 homologue that mediates mitophagy and mitochondrial fragmentation.
    Murakawa T, et al.
    Nat Commun. 2015;6:7527
  2. Autophagy-mediated degradation is necessary for regression of cardiac hypertrophy during ventricular unloading.
    Oyabu J, et al.
    Biochem Biophys Res Commun. 2013;441:787-92
  3. Rheb (Ras homologue enriched in brain)-dependent mammalian target of rapamycin complex 1 (mTORC1) activation becomes indispensable for cardiac hypertrophic growth after early postnatal period.
    Tamai T, et al.
    J Biol Chem. 2013;288:10176-87
  4. Mitochondrial DNA that escapes from autophagy causes inflammation and heart failure.
    Oka T, et al.
    Nature. 2012;485:251-5
  5. Calpain protects the heart from hemodynamic stress.
    Taneike M, et al.
    J Biol Chem. 2011;286:32170-7.
  6. Inhibition of autophagy in the heart induces age-related cardiomyopathy.
    Taneike M, et al.
    Autophagy. 2010;6:600-6
  7. Apoptosis signal-regulating kinase 1/p38 signaling pathway negatively regulates physiological hypertrophy.
    Taniike M, et al.
    Circulation. 2008;117:545-52.
  8. The role of autophagy in cardiomyocytes in the basal state and in response to hemodynamic stress.
    Nakai A, et al.
    Nat Med. 2007;13:619-24
  9. p38alpha mitogen-activated protein kinase plays a critical role in cardiomyocyte survival but not in cardiac hypertrophic growth in response to pressure overload.
    Nishida K, et al.
    Mol Cell Biol. 2004;24:10611-20.
  10. Cardiac-specific disruption of the c-raf-1 gene induces cardiac dysfunction and apoptosis.
    Yamaguchi O, et al.
    J Clin Invest. 2004;114:937-43.
  11. Targeted deletion of apoptosis signal-regulating kinase 1 attenuates left ventricular remodeling.
    Yamaguchi O, et al.
    Proc Natl Acad Sci U S A. 2003;100:15883-8.

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