ゲノム編集技術を用いて拡張型心筋症の遺伝子変異修復に成功

Targeted Genome Replacement via Homology-directed Repair in Non-dividing Cardiomyocytes

Scientific Reports 7, Article number: 9363 (2017)
doi:10.1038/s41598-017-09716-x
https://www.nature.com/articles/s41598-017-09716-x

拡張型心筋症は、心臓が拡大し、心臓の壁が徐々に薄くなり、収縮する力が低下していく指定難病のひとつです。重症化した場合は、多くの薬は無効であり、心臓移植以外に有効な治療法が存在しません。高速シークエンサー技術の進歩により、拡張型心筋症の多くは心臓の遺伝子の異常で発症することが明らかとなっています。そのため遺伝子の異常を修復することが、拡張型心筋症の根本的な治療法になると期待されますが、これまでは遺伝子を修復する適切な技術がなく、根本的な治療は不可能でした。
 CRISPR/Cas9を用いたゲノム編集は、遺伝子の狙った位置を相同組み換えにより自由にかつ簡便に書き換えることが可能な革新的な技術です。遺伝子の書き換えのためには細胞が分裂することが必要とされており、生後分裂しない心筋細胞への応用は困難とされていました。今回の研究では、アデノ随伴ウイルスによりゲノム編集に必要な遺伝子をマウスの心筋細胞に導入し、分裂しない心筋細胞においても相同組み換えが起こることを証明しました(図①)。さらに拡張型心筋症を起こすトロポニン遺伝子に変異をもったマウスの心筋細胞において、トロポニン遺伝子の変異を正常に修復することに成功しました(図②)。
本研究成果は、ゲノム編集技術を新たに心筋細胞に応用したもので、これまで有効な治療法が存在しなかった難病である拡張型心筋症の新たな治療につながることが期待されます。また、この成果の応用により、拡張型心筋症以外の、遺伝子異常を原因として発症する様々な心筋症に対する治療法の開発につながることが期待されます。

2017年4月 第3回心筋症研究会 YIA最優秀賞
石津宜丸 “心筋症遺伝子変異に対する相同組換え修復(HDR)を介したゲノム編集治療の開発”
2017年6月 ゲノム編集学会 口演発表
石津宜丸 “拡張型心筋症遺伝子変異に対する相同組換え修復(HDR)を介したゲノム編集治療の開発”

※本研究成果が報道されました!
“ゲノム編集で心臓病の治療法開発へ 大阪大” 朝日新聞
“拡張型心筋症の遺伝子修復成功…阪大チーム” 読売新聞

PageTop