ヘテロ接合性DSG2:p.Arg119Terバリアントが同定された心筋症4症例

Four cardiomyopathy patients with a heterozygous DSG2 p.Arg119Ter variant
Human Genome Variation

https://doi.org/10.1038/s41439-024-00304-w

心筋細胞介在板の構成タンパク質であるデスモグレイン2(DSG2)は、不整脈原性右室心筋症の原因遺伝子の1つです。我々は2021年に、重症両心不全を呈した心筋症症例において、ホモ接合性DSG2:p.Arg119Terストップゲインバリアントを同定しました。しかし、ヘテロ接合性DSG2:p.Arg119Terバリアントの病的意義と有病率は明らかではありませんでした。今回我々は、非虚血性心筋症患者808人の中から、ヘテロ接合性DSG2:p.Arg119Terバリアントを持つ互いに関連のない心筋症4症例を同定しました。非虚血性心筋症症例における同バリアントのアレル頻度は0.0037で、一般的な日本人集団の50倍以上でした。これら症例は、臨床的に不整脈原性右室心筋症、心室中隔欠損閉鎖術後の拡張型心筋症、拡張型心筋症、拡張相肥大型心筋症と診断され、左室収縮能の低下と多様な臨床経過を示していました。遺伝学的解析により、不整脈原性右室心筋症症例ではDSG2:p.Arg292Cysが、拡張型心筋症症例ではBAG3:p.His166SerfsTer6が、病的バリアントとして同定されました。心筋組織サンプルを用いた免疫染色により、デスモグレイン2やデスモプラキンの発現低下、電子顕微鏡解析により、断片化した介在板や間隙の開大像が明らかとなりました。iPS細胞由来分化心筋細胞を用いた解析により、ヘテロ接合性DSG2分子短縮型バリアントは心筋収縮力を低下させることが明らかとなりました。これらの知見は、重症心不全を呈する心筋症患者に、DSG2:p.Arg119Terバリアントが潜在化していること、介在板障害が収縮機能障害および疾患進行の潜在的な増悪因子である可能性を示唆しています。

本研究は、大阪大学医学部医学科5年次研究室配属での研究の一環として行われました。
第137回日本循環器学会近畿地方会 学生・研修医セッション優秀賞 2024年5月25日

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