筋ジストロフィー重症化メカニズムの一端をiPS細胞由来分化心筋細胞を用いて解明

Modeling Reduced Contractility and Stiffness Using iPSC-Derived Cardiomyocytes Generated from Female Becker Muscular Dystrophy Carrier
JACC: Basic to Translational Science 2023

https://www.jacc.org/doi/10.1016/j.jacbts.2022.11.007

現在の日本において、心臓移植が必要な重症心不全の原因の多くを拡張型心筋が占めています。ベッカー型筋ジストロフィーは、ジストロフィン遺伝子のバリアントにより発症する遺伝性の病気で、心不全の原因となる拡張型心筋症の原因となります。ジストロフィン遺伝子はX染色体上に存在するため、X染色体を1本しかもたない男性で発症することが多く、X染色体を2本もつ女性はキャリアとなり、男性に比べ軽症で経過することが多いとされています。ベッカー型筋ジストロフィー女性キャリアが、若くして重症心不全に至ることは極めてまれであり、その原因やメカニズムは明らかではありませんでした。今回我々は、補助人工心臓が必要な重症心不全に至ったベッカー型筋ジストロフィー女性キャリア症例を対象に、心筋組織病理標本を用いた解析、遺伝解析、iPS細胞から分化させた心筋細胞を用いた機能解析を行いました。解析の結果、ジストロフィン遺伝子変異に加え、コラーゲンの生合成に関わるPLOD3の遺伝子バリアントが存在することで、心臓組織の収縮力に加えスティフネス(硬さ)を低下させ、重症化に関与していることを見出しました。重症心不全の病態解明、今後の治療法開発につながることが期待されます。

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