心筋細胞肥大を負に制御するメカニズムを解明
Btg2 is a Negative Regulator of Cardiomyocyte Hypertrophy through a Decrease in Cytosolic RNA Sci Rep. 2016 Jun 27;6:28592.
https://www.nature.com/articles/srep28592
心筋の肥大は外部からの刺激に応じて生じ、高血圧性心疾患を初めとする心不全の根幹を成す現象です。予後が不良な心不全は大きな社会問題であり、新たな治療法の開発が課題です。心筋肥大の過程におけるDNAやタンパク質合成については、これまで多くの研究が行われてきましたが、RNA代謝の関与は明らかではありませんでした。
c-Mycは心筋細胞肥大において重要な役割を担う転写因子で、外部からの刺激に応じて心筋細胞において増加します。我々は、アデノウイルスを用いてc-Mycを新生仔ラット培養心筋細胞に導入すると、心筋細胞内でのRNA発現が顕著に亢進することを見出しました。更に、ChIPシークエンスを用いて、心筋細胞におけるc-Myc、RNAポリメラーゼの結合部位マッピングを行い、肥大刺激下にc-Mycにより制御される遺伝子としてBtg2を同定しました。Btg2は、心筋細胞において、RNA分解制御に関わるCcr4-Not複合体と結合し、細胞質RNA発現を抑制することで、心筋細胞肥大を負に制御していることが明らかとなりました。
増村 雄喜 第80回日本循環器学会学術集会 YIA (Basic Research部門) 優秀賞