高齢期において急速に進行した心機能低下とPKD1遺伝子変異の関連を報告
Old-Age Onset Progressive Cardiac Contractile Dysfunction in a Patient with Polycystic Kidney Disease Harboring a PKD1 Frameshift Mutation.
Int Heart J. 2018 Nov 20. doi: 10.1536/ihj.18-184.
https://doi.org/10.1536/ihj.18-184
拡張型心筋症は、心臓が収縮する力が低下していく難病のひとつです。診断技術が進歩した現代においても、多くの症例が、原因が不明なまま“特発性”拡張型心筋症と診断されています。今回我々は、高齢期において急速な心機能低下を認めた拡張型心筋症の一例を経験しました。
本症例には多発性嚢胞腎の既往があり、遺伝子解析においてPolycystin 1をコードする遺伝子であるPKD1にヘテロ接合型のフレームシフト変異を認めました。PKD1は常染色体優性遺伝形式をとる多発性嚢胞腎の原因遺伝子として知られており、細胞内カルシウム流入を制御するメカノセンサーとしての機能が知られています。PKD1は腎臓尿細管で発現することが知られていますが、本症例の心筋生検組織において、心筋細胞における発現が確認されました。近年の疫学研究から、多発性嚢胞腎と心筋症発症との関連が示唆されており、“特発性”と診断された症例においても、臨床背景から丁寧に診断を進めていくことの重要性が示唆されます。