初期研修医教育

概要

循環器内科は研修医に、ジェネラリスト(総合診療医)としての実力を身につけることを求めます。なぜなら、循環器疾患の診療には多臓器疾患の管理が不可欠だからです。個々の症状、検査所見をひとつひとつ見逃さず、きめ細かな内科診療をおこなうトレーニングを行います。診断能力、基本的手技、コミュニケーション能力を高めていく過程において、循環器診療という専門性を高めるプログラムを組んでいます。

初期研修医教育プログラム詳細

大阪大学医学部附属病院卒後教育センター

初期研修1年目は、6ヶ月の内科系研修の中での選択性になります。2ヵ月の研修期間で、腎臓内科との共通で選択可能となっています。研修2年目は、循環器内科のみの選択性でより多くの疾患の診療に携わることが可能になっています。

循環器内科における初期研修のご案内

平成19年度の厚生労働省の統計によると循環器疾患による死亡率は全体の16%と悪性腫瘍(同30%)についで第2位であり、治療費別にみると循環器疾患は5.8兆円と全体の23%他の領域を大きく引き離して第1位となっています。すなわち皆さんが医師として将来循環器疾患と接する時間は他の領域の疾患と比べて非常に多いということになります。そのため医師としての基礎を形作る初期研修において循環器内科領域の研修を体系的に行うことが非常に大切であると我々は考えています。阪大病院では初期研修に関しては様々なプログラムを用意して皆様をお迎えしていますが、循環器内科でも皆さんの初期研修が素晴らしいものとなるよう日々努力しています。

臨床部門の病棟体制(2020年度)

診療内容紹介

大阪大学医学部付属病院循環器内科では狭心症・心筋梗塞などの冠動脈疾患はもとより、心不全、心筋症、心臓弁膜症、先天性心疾患、大動脈炎症候群、末梢動脈疾患(ASO、TAO等)、肺高血圧症、不整脈、高血圧症などあらゆる循環器疾患を対象に、的確な診断・最適な治療を心がけています。またその一方で、先進的医療を推進する体制を整え、新しい診断/治療の開発にも精力的に取り組んでいます。

心移植の対象となるような重症心不全症例に対しては、心臓血管外科と一つのチームを形成して全国から患者を受け入れています。これらの症例に対し、最適な内科的薬物療法の評価・徹底と、不整脈アブレーションなどの内科的非薬物治療を実践しています。また、内科治療抵抗性症例には、機能的僧帽弁閉鎖不全修復などの外科的非薬物治療のタイミング、移植適応、補助人工心臓への移行時期と離脱の可否、そして移植後の管理を外科と連携をとりながら進めております。

冠動脈疾患に対しては、高度救命救急センターとの連携により、 急性心筋梗塞や不安定狭心症などの急性冠症候群の症例も積極的に受け入れており、24時間緊急心臓カテーテル検査・冠動脈造影検査を施行できる体制を整えています。また、外科的治療の困難例や複雑な血管病変例にも積極的に取り組み、ロータブレーターなどのdeviceを駆使して大きな成果を挙げています。また、高脂血症、低HDL コレステロール血症、糖尿病、高血圧などの動脈硬化危険因子の管理とその基盤となる内臓脂肪蓄積に焦点をあてた代謝異常の是正を試みており、ユニークな観点からの循環器疾患の一次予防・二次予防を実践しています。

不整脈の症例に対しては、ペースメーカ植込み、植え込み型除細動器(ICD) 植込みや心臓再同期療法(CRT)などのdeviceを用いた治療から心房細動、心室頻拍などの頻脈性不整脈に対する電気的焼灼術(アブレーション)まであらゆる不整脈治療を網羅しております。また、重症心不全や成人先天性心疾患などの難治性の不整脈にも積極的に取り組んでいます。

研修プログラムの特色

大阪大学医学部附属病院循環器内科は東9階に循環器疾患集中治療室(CCU)6床、一般病床45床を有し、年間約1000例の入院患者を扱っています。疾患としては虚血性心疾患、心筋症、心不全、不整脈疾患をはじめ、肺高血圧症、2次性高血圧や高脂血症など極めて多岐にわたり、初期治療から退院後の社会復帰に至るまで、我が国でトップクラスの臨床研修を積むことが可能です。当科での研修目標は、内科医師としての基本的な考え方を身につけると同時に、基本的な循環器診療を支障なく行える知識と技能を修得することです。

 
重症症例カンファ 重症症例カンファ 重症症例カンファ 重症症例カンファ 重症症例カンファ
ハートセンター
内科外科合同教授回診
  (教授回診) 教授回診  
内科外科合同心不全カンファ
内科外科合同弁膜症カンファ
内科外科合同TAVIカンファ
心臓移植検討会
(第1週目)
多職種合同カルテ回診
カテ検討カンファ

循環器内科抄読会
   

赤字が研修医参加。黒字は専門カンファで参加は自由

病棟研修体制とその内容

研修医には循環器内科患者における急性期から慢性期に至る一連の診療業務を担当していただきます。病棟ではシニアライターの教育・指導のもと、ジュニアライターがマンツーマンで指導する体制をとり、必要な診断や治療法は各ライターの指導監視の下で修得・実践できるよう配慮しています。主治医は平均5〜6名の循環器内科主観患者を受持ちます。各研修医に毎週1〜2名の新入院患者があたります。希望があれば、夜間の救急症例に対しても当直医とともに診断と治療に当たることが可能な体制もとっており、数多くの循環器疾患が経験できるように工夫しています。当科を研修中には、救命に必要な最低限の手技はできるだけ経験してもらうようにしています。心エコー、心臓カテーテル検査などの循環器内科領域における特殊検査についても個人の方向性、希望、能力に応じて経験が可能です。毎朝の重症例のカンファから、週1回カテーテル症例カンファと入院症例カルテ回診(多職種)の一員となることで疾患の理解を深め、毎週木曜日の教授回診では研修医が各自の症例提示を行います。また、専門家による研修医向け教育レクチャーも行い、学会発表などの学術活動にも積極的に参加するように指導しています。

行動目標と経験目標

A.行動目標

医師としての実力、品位、姿勢、協調性について学ぶこと。患者・家族との信頼関係を構築すること。臨床上の疑問点を解決する姿勢を常に持ち、そのための情報収集と EBMの適応判断を修得すること。患者の病歴聴取とカルテ記載が的確に行い、症例提示と問題提起が速やかにできるようにすること。以上を行動目標としています。

B.経験目標

  • 基本的な循環器疾患に適切な対応がとれるように経験を積む。
  • 正確な病歴聴取と的確な身体理学所見の把握から、鑑別診断の方向付けが出来る。
  • 心臓救急についての知識と心肺蘇生術に精通する。
  • 胸部X線、心電図、心臓超音波検査の実際的診断力を獲得する。
  • 心筋虚血や心不全の診断と治療、不整脈の診断と治療、高血圧症の診断と治療、動脈硬化の診断と治療、循環器疾患の一次予防、二次予防等それぞれの実際を学ぶ。

(参考)修得すべき診断法、検査法、治療法、病態、疾患、予防についての具体的な内容

修得すべき検査法

専門的な理学所見、レントゲン診断、安静時・運動負荷心電図診断、ホルター心電図、心音・心機図、心臓超音波検査、経食道心臓超音波、心臓カテーテル検査 (右心カテーテル検査、左心カテーテル検査、冠動脈造影、左室造影、血管内超音波検査、心筋生検、電気生理学的検査)、心臓核医学検査、二次性高血圧鑑別 のための諸検査など。

修得すべき治療法

心臓救急処置と薬物治療、虚血性心疾患の急性期治療および一次・二次予防法、心不全の治療、不整脈の治療、高脂血症の治療、電気的除細動、電気的焼灼術、 心臓カテーテル治療術、心血管手術適応の決定、心臓リハビリテーション、補助人工心臓など。

修得すべき病態・疾患

ショック、心不全、不整脈、心臓突然死、血圧異常、虚血性心疾患、弁膜症、心筋疾患、心外膜疾患、心臓腫瘍、感染性心内膜炎、肺性心、先天性心血管奇形、大動脈疾患、末梢動脈疾患、心臓神経症、肺血管疾患、高脂血症など。

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