循環器内科シラバス

循環器内科シラバス(循環器病学臨床講義)概要

循環器病学臨床講義は、循環器疾患の診断、治療を行う上で必要な知識の習得を目的とします。循環器全般に関する総合的な知識だけでなく、心不全、冠動脈疾患、不整脈、小児循環器疾患、循環器疾患外科治療等多岐にわたる各論について、概説します。また、新たな治療手技、循環器疾患に関する基礎的研究から臨床応用まで、最新の知見を交えての講義を行います。循環器病学臨床講義は、循環器内科、心臓血管外科、小児科にて対応していますが、ここでは循環器内科担当分のシラバスについて概要をお示しします。

講義項目 講義タイトル
循環器病学総論 循環器内科学の現状と課題
心臓解剖・心力学、興奮収縮連関・Caハンドリング
心機能評価法および心エコー図法
心電図の読み方
循環器領域における遺伝性疾患
臨床薬理学
弁膜症・心筋症・炎症性疾患 心臓弁膜症
Structural heart diseasesに対するカテーテル治療
心筋組織における炎症、心筋炎・心内膜炎
心筋症の診断と治療
虚血性心疾患 動脈硬化の成因とリスク管理
狭心症・末梢血管疾患の診断と治療
急性冠症候群の診断と治療
カテーテルインターベンション治療(1):冠動脈インターベンション
カテーテルインターベンション治療(2):治療デバイスの進化を中心に
心不全 心不全ステージ分類による診断治療戦略 stage A-stage C
心不全ステージ分類による診断治療戦略 stage D
肺循環 肺高血圧症
不整脈 不整脈の機序
頻脈性不整脈の診断と治療
徐脈性不整脈の診断と治療
Interactive case conference 循環器内科医の考え方:interactive case conference

循環器内科学の現状と課題

循環器病診療に必要な知識は、病態の解明における進歩と先端的科学技術の発展に伴い日々増加している。循環器疾患発症メカニズムに対する基本的な理解の上に、現在利用可能な最新の診断技術や治療手技への理解を深めるとともに、未だ解決に至らない疾患に対して今後どのような診療を行っていけばよいか、現在の循環器内科診療における問題点とともに、未来医療の可能性について概説したい。

心臓解剖・心力学、興奮収縮連関・Caハンドリング

循環器疾患に精通するスタートは、心臓を構成する各パートの役割を理解することにある。本講義では、各パートの解剖学的位置関係のみならず、各パートの持つ動的な機能への理解を深めたい。心疾患では左心室の機能障害が病態を決める重要な役割を担うことから、左心室の機能を中心に概説する。更に、心筋収縮の基本概念である興奮収縮連関、Caハンドリングについても概説する。

心機能評価法および心エコー法

心臓は収縮と弛緩を繰り返し行うことにより全身の臓器に血液を送っている。本講義では心臓の機能(収縮機能と拡張機能)の評価法とその問題点について概説する。また、循環器疾患の診断に必要な画像診断法(超音波心臓診断)の特徴とその有用性、問題点について実際の画像を供覧することにより理解を深めたい。

心電図の読み方

心電図読影は心臓疾患診断の基本のひとつである。心電図の情報を読み取るために必要な電気生理学的知識や不整脈診断の基礎について解説する。

循環器領域における遺伝性疾患

遺伝性難病に関わる多くの遺伝子変異や染色体異常が同定され、その成因をゲノム解析を含む遺伝学的検査等により特定することが可能な時代になった。臨床遺伝子診断から最新の疾患ゲノム解析技術、治療へのゲノム情報の応用に至るまで、遺伝性心血管疾患の成因に論拠しながら、疾患の理解に必要なことを習得する。臨床医・研究医として必要な基礎的概念のみならず、遺伝性疾患の患者に向き合う際に医師として理解すべき事項についても概説する。

臨床薬理学

臨床薬理学は、薬物の人体における作用と動態を研究し、合理的薬物治療を確立するための科学である。また、合理的薬物治療とは、副作用の出現しない有効量のクスリを、そのクスリの有効なヒトに投与することを意味する。このような立場から、本講義では、循環器領域で使用される主だった薬物の特徴を解説する。将来、薬物適正使用を実践する上で必要な基礎知識を修得していただきたいと考えている。

心臓弁膜症

心臓の弁膜の異常として狭窄および閉鎖不全があり、僧帽弁、大動脈弁、三尖弁および肺動脈弁に発症し、その組み合わせにより種々の病態をきたす。感染性心内膜炎は既存の心内膜病変に宿主要因が加わることにより発症し、菌血症をきたす。本講義では、弁膜症の病態生理と感染性心内膜炎の原因、治療について概説する。

Structural heart diseasesに対するカテーテル治療

カテーテル治療の進歩は目覚ましく、近年では冠動脈疾患だけでなく、大動脈弁、僧帽弁、心房中隔、左心耳などの心内構造に対しても治療が行えるようになっている。これらの進歩を概説するとともに、どのような技術が開発され応用されているかについて概説する。

心筋組織における炎症、心筋炎・心内膜炎

心筋組織における炎症反応は、心不全を含めた様々な心疾患に関与している。心筋炎はウイルス感染などを契機として、急激に心機能の低下や重篤な不整脈を来す致死的な疾患である。感染性心内膜炎は、弁膜症や先天性心疾患等の基礎疾患を背景疾患として、菌血症、疣贅の形成、弁機能不全、塞栓症を呈する重篤な疾患である。本講では心筋炎、及び感染性心内膜炎の診断・治療について概説する。

心筋組織における炎症、心筋炎・心内膜炎

心筋症とは心筋の機能異常を伴う心筋疾患の総称である。本講義では、拡張型心筋症と肥大型心筋症を中心に、その病態と治療について概説する。また、その発症の分子機構について最新の知見を踏まえ紹介する。

動脈硬化の成因とリスク管理

粥状動脈硬化は狭心症、心筋梗塞、脳卒中などの発症基盤となり、その成因も細胞生物学的レベル、分子レベルで明らかになってきた。動脈硬化巣(プラーク)には血清リポ蛋白由来の脂質を蓄積したマクロファージ由来の泡沫細胞が集積するとともに、リンパ球、好中球なども存在し、動脈硬化は一種の炎症であるという概念が提唱されている。本講義では動脈硬化の成因について血管生物学の観点から解説する。 粥状動脈硬化の予防と治療に関して、食事・運動療法を含む生活習慣の改善や、各危険因子の個別な治療が重要である。危険因子に関する最近の知見についても紹介する。

狭心症・末梢血管疾患の診断と治療

近年、我が国において動脈硬化性疾患が増加し、さらに将来に向けて急増する懸念がある。従って、循環器領域だけではなく、広く診療に携わる医師は、冠動脈疾患と末梢血管疾患、およびそれを来す危険因子の存在をつねに念頭において置くことが重要である。本講義では、狭心症を中心とした冠動脈脈疾患、および末梢動脈疾患の病態について解説するとともに、これら動脈硬化性疾患のリスクファクターに関する最近の内外の動向と新しく注目されている因子につき解説する。

急性冠症候群の診断と治療

急性冠症候群は冠動脈プラークの破綻,血栓形成を基盤として急性心筋虚血を呈する臨床症候群であり,急性心筋梗塞,不安定狭心症から心臓急死までを包括する疾患概念である。従来個別に考えられていたこれらの疾患群が急性冠症候群として包括されるようになった背景には,いずれも冠動脈内のunstable plaque(不安定粥腫)の存在とplaque rupture(粥腫破綻)から血栓形成に至る一連の病態がみられ,その治療や予防にも共通項があるとの認識によるものである。

カテーテルインターベンション治療(1):冠動脈インターベンション

冠動脈に対するカテーテルインターベンション治療はバイパス手術に対して低侵襲・迅速であり、薬物療法に対して根治的であるという優位性を持つ。一方、根本的には侵襲的治療でありリスクを含んだ治療という点を基本に本治療法の目的・適応・方法について説明を行う。

カテーテルインターベンション治療(2):治療デバイスの進化を中心に

虚血性心疾患治療の歴史は、カテーテルインターベンションの出現により大きく変わった。1977年に始まったこの治療は、現在、ゴールデンスタンダードの治療と位置づけられるにまで至った。治療デバイスの開発の歴史を紐解き、現状、そして、将来への展望を、シリコンバレーでの経験を含め、概説する。

心不全ステージ分類による診断治療戦略 stage A-stage C

慢性心不全は,“慢性の心筋障害により心臓のポンプ機能が低下し,末梢主要臓器の酸素需要量に見合うだけの血液量を絶対的にまた相対的に拍出できない状態であり,肺または体静脈系にうっ血をきたし生活機能に障害を生じた病態”と定義される。心不全の診断には、詳細な問診・他覚的所見の把握,胸部レントゲン写真,心電図,生化学的検査などによる侵襲度の低い検査による基礎疾患の検索と心原性以外の疾患の除外,必要に応じた特殊検査の施行が必要である。慢性心不全に対する治療として、生活指導、基礎疾患そのものに対する介入、そして心不全増悪因子の除去が重要である。これらに加えて、心不全のステージに応じた薬物療法ならびに最近進歩が著しい非薬物療法を把握することが循環器診療においては必須である。本講義では、各疾患ステージ(A, B, C)に応じた心不全診断のためのアプローチ法、適切な治療選択について述べる。

心不全ステージ分類による診断治療戦略 stage D

心不全病態の進行に応じた適切な薬物治療、非薬物治療にも関わらず、治療抵抗性の心不全に至る段階はstate Dと定義される。本講義ではこのような難治性心不全に対する循環器診療の現状について、左室補助人工心臓や心臓移植の適応も含めて概説する。

肺高血圧症

肺の動脈圧が上昇し右心不全をきたす疾患の総称であり、肺動脈そのものに原因があるだけでなく、左心系病変や肺疾患、血栓塞栓症などのさまざまな原因で発症する。本講義では、主に肺動脈性肺高血圧症について、その診断、病態、治療について概説する。かつては肺移植しか有効な治療法がない難病であったが、近年その病態が明らかになり次々に有効な治療薬が開発されている。

不整脈の機序

本講では、不整脈の機序について、心臓の刺激伝導系の構成および電気生理学的な観点から解説する。

頻脈性不整脈の診断と治療

頻脈性不整脈の概要・診断・治療について概説する。併せて最も頻度の多い頻脈性不整脈である心房細動についてその治療戦略を紹介する。

徐脈性不整脈の診断と治療

本講では、徐脈性不整脈の診断およびペースメーカ治療の可否について、最新の知見も交えて解説する。

循環器内科医の考え方:interactive case conference

本講義では、循環器内科医がどのような思考回路により実際の診療を行うかを、与えられた症例について、設問に対してリアルタイムで解答してもらいながら、双方向に学んでいく。

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