循環器疾患レジストリ研究(臨床効果データベース整備事業 CLIDAS研究)
更新日:2025.05.13
1.研究の対象
18歳以上で、
- 2013年4月1日から 2025年1月31日まで狭心症や心筋梗塞、心不全、成人先天性心疾患、高血圧、大動脈解離、大動脈瘤などの循環器疾患のために循環器内科外来を受診された方
- 2013年4月1日から 2025年1月31日まで狭心症や心筋梗塞、心不全、成人先天性心疾患、高血圧、大動脈解離、大動脈瘤などの循環器疾患のために一度以上入院されたことがある方
- 2013年4月1日から 2025年1月31日まで心電図検査を受けたことがある方
を対象としております。国内の13の医療機関:自治医科大学附属病院、自治医科大学附属さいたま医療センター、東京大学医学部附属病院、九州大学病院、東北大学病院、国立循環器病研究センター病院、熊本大学病院、大阪大学医学部附属病院、愛媛大学医学部附属病院、国立国際医療研究センター、順天堂大学、佐賀大学、大阪公立大学の患者さんのデータをまとめ、共同で分析を進めて参ります。
2.研究目的・方法
いわゆるEBMと呼ばれる科学的根拠に基づいた医療を行うべきだという概念は日本においては1990年代から徐々に浸透してきました。そうした科学的根拠として最も信頼が置かれてきたのが介入試験の結果となります。介入試験というのは次のようなものです。研究対象となる患者さんを二つのグループに分け、それぞれのグループの患者さんに対して従来の治療Aと新しい治療Bを無作為に割り当てて治療を行い、通常数ヶ月から数年間追跡調査を行ってAとBのどちらが有効であるかを比較します。科学的根拠としては確かに最も質が高いものですが、介入試験を行うに当たってはできるだけ効果の違いを明らかにするために登録できる患者さんに条件をつけて行われることが一般的です。そのため、介入試験に含まれている患者さんたちは実際に我々が診察している患者さんの像とは異なることが多々あります。他方で実際にどのような治療がどのくらい多く行われていて、費用対効果を含めた効果がどのようであるかについてはこれまで十分検討されてきませんでした。
そのため、本研究では電子カルテや関連システムに蓄積されたデータを分析することで診療の実態を明らかにし、各治療間の費用対効果を含めた効果の検証を行う予定です。また、一施設だけですと傾向が偏って必ずしも一般的に言える結果が得られないため、多機関共同で研究を行います。これまでこうした研究がなかなか行われなかったのは、電子的にデータが蓄積されていたとしても電子カルテのメーカによって形式が異なっていたことが原因の一つでした。本研究では様々な電子カルテに残された情報を共通の形式で統合し、その情報を分析し循環器疾患の実態・薬物あるいはカテーテル治療などの効果・有害事 象、患者さんの予後などを調べます。
さらに近年AI技術の発展に伴い、例えば心電図でAIを解析することにより心臓の動きに関する情報を新たに引き出せることが分かってきており、そうした解析を行うことでより精緻な診断につなげる研究も行います。また、こうした研究を大学などの学術機関同士で行うとともに心電図システムや医療画像システムを販売する会社と共同研究を行い、実際の製品開発に役立てることも計画しています。また治療薬は開発時は様々な条件を整えた臨床試験で評価されますが、実際の臨床現場ではそうした条件とは異なる中で使われることが多く、製薬会社と共同研究を行うことで治療薬の再評価や今後新しく開発する治療の方向性に関する知見が得られるため、製薬会社との共同研究も行います。
この研究は自治医科大学医学系倫理審査委員会あるいは各医療機関に設置された倫理審査委員会の承認を受け、各医療機関の長が許可し実施されるもので す。
3.研究に用いる試料・情報の種類
情報:患者さんのカルテに記載された項目を使用します。具体的には以下の項目についてデータベースを作成し分析します。
- 患者背景
任意ID、年齢、性別、身長、体重、病名、冠危険因子(高血圧、糖尿病、喫煙、脂質異常症)、既往(脳卒中)、飲酒歴 - 血圧・脈拍数
- すべての血液検査、尿検査
- 心電図
- 心エコー(レポート、動画)
- 心臓カテーテル検査・治療に関するデータ
- 心血管イベントデータ(非致死的心筋梗塞、冠動脈血行再建、非致死的脳卒中、全ての死亡)
- DPCデータ、レセプトデータを用いて計算された医療費データ
- 冠動脈CT、冠動脈CTレポート、心臓MRI、心臓MRIレポート、胸部レントゲン
- 処方薬、注射薬
4.個人情報の保護 および 研究への参加・拒否について
この研究に関わって収集される試料や情報・データ等は、外部に漏えいすることのないよう、慎重に取り扱う必要があります。あなたの情報・データ等は、解析する前に氏名・住所・生年月日等の個人情報を削り、代わりに新しく符号をつけ、どなたのものか分からないようにした後に、自治医科大学へ送付・一元化し、それを最終的なデータベースとして研究に利用させていただきます。ただし、研究でご自身のデータが使用されることを望まれない場合は対象から除外させて頂きます。なおデータ集計を終えた後は、それぞれの患者さんのデータがどれに対応するか不明となるため、削除することが出来ない場合があります。
5.外部への試料・情報の提供
得られたデータは主たる研究機関である自治医科大学へ集積させますが、データの提供は特定の関係者以外がアクセスできない状態で行います。対応表は、各医療機関における研究責任者が保管・管理します。
6.研究組織(責任者)
自治医科大学 | 永井良三 |
自治医科大学附属病院 | 興梠 貴英、苅尾 七臣 |
自治医科大学附属さいたま医療センター | 藤田 英雄 |
東京大学医学部附属病院 | 武田 憲彦 |
九州大学病院 | 的場 哲哉 |
東北大学病院 | 中山 雅晴、後岡 広太郎 |
国立循環器病研究センター | 北井 豪、宮本 恵宏 |
熊本大学病院 | 辻田 賢一、中村 太志 |
大阪大学医学部附属病院 | 坂田 泰史、武田 理宏 |
愛媛大学医学部附属病院 | 山口 修、木村 映善 |
国立国際医療研究センター | 廣井 透雄、美代 賢吾 |
順天堂大学 | 南野 徹、藤林 和俊 |
佐賀大学 | 野出 孝一、高橋 宏和 |
大阪公立大学 | 福田 大受、岡村 浩史 |
東京大学先端科学技術研究センター | 原田達也 |
国立情報学研究所 | 相澤彰子 |
情報・システム研究機構 | 中野美由紀 |
富士フイルム株式会社 | 成行書史 |
アルム株式会社 | 坂野 哲平 |
バイエル薬品株式会社 | 狼 卓 |
ノバルティスファーマ株式会社 | 家串和真 |
7.本研究の実施における経費・予算について
本研究は日本循環器学会ITデータ部会、内閣府SIP3研究開発費、ノバルティスファーマ社、日本バイエル薬品株式会社からの資金提供により実施されます。
医薬品企業からの寄付あるいは研究費を受ける場合、利益相反について専門の委員会で審査を受け、また倫理審査委員会で承認されれば、受け入れを行います。
8.お問い合わせ先
本研究に関するご質問等がありましたら下記の連絡先までお問い合わせ下さい。
ご希望があれば、他の研究対象者の個人情報及び知的財産の保護に支障がない範囲内で、研究計画書及び関連資料を閲覧することが出来ますのでお申し出ください。また試料・情報が当該研究に用いられることについて患者さんもしくは患者さんの代理人の方がその使用を望まない場合には、研究対象とは致しませんので下記の連絡先までお申し出ください。その場合も患者さんに不利益が生じることはありません。
照会先および研究への利用を拒否する場合の連絡先
大阪大学医学部附属病院 医療情報部
住所 大阪府吹田市山田丘2−15
電話 06-6879-5900
担当 小西正三
研究責任者
大阪大学大学院 循環器内科学 坂田泰史
研究代表者
学長 永井 良三
連絡先 :栃木県下野市薬師寺 3311-1 自治医科大学
電話番号:0285-58-7577