拡張相肥大型心筋症の病態をヒトiPS細胞由来分化心筋細胞により解明

Human-Induced Pluripotent Stem Cell–Derived Cardiomyocyte Model for TNNT2 Δ160E-Induced Cardiomyopathy
Circ Genom Precis Med. 2022;15:e003522. DOI: 10.1161/CIRCGEN.121.003522

https://www.ahajournals.org/doi/abs/10.1161/CIRCGEN.121.003522

肥大型心筋症は、主に遺伝子の変異により心臓の筋肉が肥大し、拡張する力が低下する疾患です。肥大型心筋症の原因遺伝子の多くは、心筋収縮を担うサルコメアを構成し、なかでもトロポニンTを含む細いフィラメントの遺伝子変異は、拘束性障害や収縮力低下のリスク因子として知られています。しかしトロポニンT遺伝子変異がヒト心筋細胞においてどのように病態形成に関わるのかは明らかでなく、精密なヒト疾患モデルの確立が必要でした。
我々は、ヘテロ接合型トロポニンTΔ160E変異が同定された拡張相肥大型心筋症症例よりiPS細胞を樹立し、ゲノム編集を用いてΔ160E変異を正常に修復、あるいはホモ接合型にΔ160E変異を導入したiPS細胞を作成しました。これらアイソジェニックiPS細胞を心筋に分化させ解析したところ、トロポニンTΔ160E変異はサルコメア局所でのカルシウム濃度の減衰時間を延長させるとともに、拡張速度を低下、弛緩時間を延長させることが明らかとなりました。更に、Δ160E変異は異常電位を惹起し、活動電位持続時間を延長させ、NFATc1の核内移行、心筋肥大、CaMKIIδ・ホスホランバンリン酸化の亢進を来すことが明らかとなりました。緑茶カテキンの一種であるエピガロカテキンガレートをΔ160E心筋に投与したところ、カルシウム濃度減衰時間を短縮させ、拡張機能を改善させることが明らかとなりました。トロポニンTΔ160E遺伝子変異の同定と、精密に遺伝子を改変したモデル細胞の樹立、治療概念の実証は、トロポニン心筋症に対する個別化医療の確立につながりえると考えられます。

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